都庁公務員はどれくらい退職金もらえるのかな。
近年の推移とか民間企業や他の公務員と比べて高いのか知りたい。
今後の退職金がどうなっていくのかも教えてほしい。
このような疑問にお答えします。
本記事の内容
- 都庁公務員の退職支給額の決まり方
- 直近6年間の平均退職金額推移
- 国家公務員、民間企業との比較
- 今後の退職金動向
この記事を書く私は都庁職員歴8年。民間企業で働きながら、都庁への転職を経験しました。
今回は、都庁職員の退職金事情を紹介していきます。
本記事を読み終えると、都庁公務員はどれくらい退職金をもらっているのか、また民間企業や他の公務員と比べて高いのかが分かります。
都庁公務員の退職金が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください!
退職手当の平均支給額と支給日
①平均支給額
直近の平均支給額は、以下表1のとおりです。
定年が60歳なので、26〜27歳に入庁して、平均で約2,200万円もらえる感じです。
退職年度 | 平均支給額(定年退職) | 平均勤続年数 |
---|---|---|
令和2年度 | 2,222万円 | 33年11月 |
令和元年度 | 2,251万円 | 34年5月 |
平成30年度 | 2,181万円 | 33年4月 |
②支給日
退職手当の支給日は、退職した日から1ヶ月以内です。
「職員の退職手当に関する条例」で定められているから。
定年退職の場合は、60歳になった年度の3月31日に退職するので、翌月の4月に支給されます。
職員の退職手当に関する条例
第三条 (退職手当の支給)
2 第五条及び第九条の規定による退職手当並びに第十二条の規定による退職手当は、職員が退職した日から起算して一月以内に支払わなければならない。
https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000420.html
退職手当支給額のしくみ
①支給額の決まり方
退職手当金額は以下の式で決まります。全て固定額です。
退職手当= 退職時給料月額 × 支給率 + 退職手当調整額
退職手当調整額(定年等退職者のみ)= 退職前240月(20年)分の職責点数合計 × 1,100円
具体的な数字等は以下のとおりです。
自己都合等による退職は、退職手当調整額が支給されないので、定年退職に比べて支給額は少なくなります。
早期に退職せず働き続けた方が、金額が加算されて得するということです。
退職手当金額から所得税と住民税が引かれた額が、手取り額になります。退職所得控除があるので、税金は低く抑えられるようになっています。
税金の計算は複雑ですが、退職金にかかる税金は、給与やボーナスと同様に源泉徴収されるので、自分で行う必要はありません。
所得税の算出方法は、以下のとおり。住民税は、課税退職所得金額に住民税率10%を乗じた金額です。
(出典)退職金と税(国税庁)
②支給額シミュレーション
各職級の定年退職時における、退職手当額のシミュレーションは、以下表2-1のとおりです。
定年退職時の職級 | 退職金手取り額 |
---|---|
主事 | 約1,660万円 |
主任 | 約1,950万円 |
課長代理 | 約2,280万円 |
統括課長代理 | 約2,340万円 |
課長 | 約2,600万円 |
部長 | 約2,920万円 |
退職金の手取り額は、退職所得控除額が大きく税金が抑えられるため、手取り率が95%以上と高いです。
つまり、ほとんど税金で減らずに手元に残ります。
定年退職時の職級 | 定年前20年の職級 | 退職手当基本額 | 調整額 | 退職手当額(総額) | 手取り額 | 手取り率 |
---|---|---|---|---|---|---|
主事 | 主事20年 | ¥13,944,900 | ¥2,640,000 | ¥16,584,900 | ¥16,584,900 | 100% |
主任 | 主任20年 | ¥15,587,500 | ¥3,960,000 | ¥19,547,500 | ¥19,495,125 | 99.7% |
課長代理 | 課長代理20年 | ¥17,849,300 | ¥5,280,000 | ¥23,129,300 | ¥22,763,870 | 98.4% |
統括課長代理 | 課長代理10年、統括課長代理10年 | ¥17,849,300 | ¥5,940,000 | ¥23,789,300 | ¥23,357,870 | 98.2% |
課長 | 統括課長代理10年、課長10年 | ¥19,565,000 | ¥7,260,000 | ¥26,825,000 | ¥26,003,750 | 96.9% |
部長 | 統括課長代理5年、課長10年、部長5年 | ¥22,648,100 | ¥7,920,000 | ¥30,568,100 | ¥29,185,385 | 95.5% |
算出にあたる留意事項
- 25歳から60歳まで35年間勤務し、定年退職した場合を想定
- 定年前20年の職級は、代表的なモデルを想定
- 給料額は、各職級の給料表最高額を設定
(参照) 東京都職員 行政職給料表(一) (令和3年4月1日現在)
③支給額を増やす方策
結論から言うと、給料額を増やすことです。
なぜなら、退職手当額算出のベースとなる金額だからです。
具体的には、主任試験や管理職試験などの昇格試験に合格していくことが必要になります。
退職手当の支給率は、勤続年数によって増えていきますが、勤続可能な年数は入庁した時点で決まるため、実質固定値です。
ちなみに、定年前早期退職特例措置(勧奨退職制度)を利用して退職すると、退職金が割増し(2%~20%加算)でもらえます。
ただ、受け取れる退職手当金額は、定年まで働いた時と比べると当然少なくなります。
なので、退職金額を増やす方法は、昇格を重ねて給料額を増やしていくことです。
直近6年間の退職手当金額推移
①定年退職
定年退職の退職手当支給実績と金額推移状況は、以下表3、図2のとおりです。
直近6年間の平均支給額は1,900万円から2,000万円で推移しており、大きな変化はありません。
また、知事部局は2,200万円前後で、他事業よりも高くなっています。
退職年度 | 知事部局 | 交通事業(バス) | 高速電車事業(地下鉄) | 水道事業 | 下水道事業 | 5事業平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
令和2年度 | ¥22,220,000 | ¥15,860,000 | ¥18,885,000 | ¥20,830,000 | ¥22,452,000 | ¥20,049,400 |
令和元年度 | ¥22,514,000 | ¥14,477,000 | ¥18,688,000 | ¥20,149,000 | ¥20,838,000 | ¥19,333,200 |
平成30年度 | ¥21,809,000 | ¥14,836,000 | ¥18,741,000 | ¥21,039,000 | ¥20,146,000 | ¥19,314,200 |
平成29年度 | ¥21,624,000 | ¥14,699,000 | ¥16,748,000 | ¥21,007,000 | ¥20,495,000 | ¥18,914,600 |
平成28年度 | ¥22,616,000 | ¥14,578,000 | ¥18,431,000 | ¥21,527,000 | ¥22,113,000 | ¥19,853,000 |
平成27年度 | ¥22,771,000 | ¥14,882,000 | ¥20,237,000 | ¥21,912,000 | ¥22,161,000 | ¥20,392,600 |
6カ年平均 | ¥22,259,000 | ¥14,888,667 | ¥18,621,667 | ¥21,077,333 | ¥21,367,500 | ¥19,642,833 |
②自己都合退職
自己都合退職の退職手当支給実績と金額推移状況は、以下表4、図3のとおりです。
直近6年間の平均支給額は200万円から300万円で推移しています。
ただ、自己都合退職なので、当然年によって退職する人の属性(勤続年数や職級)は変わり、あくまで参考程度のデータです。
退職年度 | 知事部局 | 交通事業(バス) | 高速電車事業(地下鉄) | 水道事業 | 下水道事業 | 5事業平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
令和2年度 | ¥2,341,000 | ¥1,865,000 | ¥4,641,000 | ¥2,604,000 | ¥2,106,000 | ¥2,711,400 |
令和元年度 | ¥1,939,000 | ¥2,915,000 | ¥2,236,000 | ¥1,528,000 | ¥891,000 | ¥1,901,800 |
平成30年度 | ¥2,178,000 | ¥3,862,000 | ¥4,340,000 | ¥3,408,000 | ¥1,982,000 | ¥3,154,000 |
平成29年度 | ¥1,941,000 | ¥4,119,000 | ¥1,756,000 | ¥3,294,000 | ¥1,707,000 | ¥2,563,400 |
平成28年度 | ¥2,410,000 | ¥2,945,000 | ¥2,586,000 | ¥1,382,000 | ¥3,334,000 | ¥2,531,400 |
平成27年度 | ¥2,101,000 | ¥3,319,000 | ¥8,056,000 | ¥8,145,000 | ¥2,613,000 | ¥4,846,800 |
6カ年平均額 | ¥2,151,667 | ¥3,170,833 | ¥3,935,833 | ¥3,393,500 | ¥2,105,500 | ¥2,951,467 |
公務員が自己都合等により退職する場合、民間企業とは違って雇用保険の適用がないため、失業手当は支給されません。
なので、退職手当は失業手当を補完するものとなります。
一般で支払われる失業手当の金額と比べて、退職手当の方が少ない場合は、その差額分が仮の基本手当として追加で支払われます。
【雇用保険法】
(適用除外)
第六条 次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
六 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=349AC0000000116
【職員の退職手当に関する条例(東京都)】
(失業者の退職手当)
第13条 勤続期間12月以上で退職した職員であつて、第一号(退職手当)に掲げる額が第二号(雇用保険の失業手当)に掲げる額に満たないものは、当該退職手当のほかその超える部分の失業の日につき基本手当の日額に相当する金額を、退職手当として支給する。
https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000420.html#e000001144
他公務員・民間企業との比較
①国家公務員・特別区(23区)
直近5年間における、国家公務員等の退職手当支給状況は、以下表5・図4のとおりです。
平均支給額は2,000万円から2,200万円の間で推移しており、大きな変化はありません。
また、公務員間で比べても大差はないです。
これは退職手当を算出する際の一番基礎となる給料月額が、民間の平均給与額を基準に決められており、ほぼ同じ数値になるためです。
退職年度 | 国家公務員(行政職) | 特別区(大田区) | 特別区(港区) |
---|---|---|---|
令和元年度 | ¥21,408,000 | ¥20,238,000 | ¥21,193,455 |
平成30年度 | ¥21,523,000 | ¥20,082,000 | ¥21,024,128 |
平成29年度 | ¥21,492,000 | ¥21,265,000 | ¥21,398,874 |
平成28年度 | ¥22,231,000 | ¥21,646,000 | ¥22,161,526 |
平成27年度 | ¥22,398,000 | ¥19,498,000 | ¥21,595,666 |
5カ年平均額 | ¥21,810,400 | ¥20,545,800 |
②民間企業
民間企業の退職金支給額状況は、以下表6・図5のとおりです。
厚生労働省が5年に一度実施している就労条件総合調査結果データのため、直近ではなく過去25年間の状況となります。
平均支給額は年々減少傾向にあり、近年だと2,000万円を下回っており、定年退職による退職金は、公務員よりも低い数値となっています。
退職年 | 民間企業(勤続 20 年以上かつ 45 歳以上(大学・大学院卒)) |
---|---|
平成29年 | 1,788万円 |
平成24年 | 1,941万円 |
平成19年 | 2,280万円 |
平成14年 | 2,499万円 |
平成9年 | 2,871万円 |
平成4年 | 2,462万円 |
今後の退職手当動向
結論からいうと、徐々に減少していくと考えられます。
なぜなら、民間企業の退職金が減少傾向にあるためです。
国は民間企業の状況に応じて退職手当を減らしていくと考えられるため、東京都もそれに合わせざるをえません。
実際に以下表6のとおり、国は官民の支給水準均衡を図るため、退職手当法上設けられている「調整率」の引き下げを実行しています。
つまり、退職手当金額を減らしていきますよということですね。
実施年 | 退職給付調整率 |
---|---|
平成29年 | 87/100から83.7/100へ引き下げ |
平成24年 | 104/100から段階的に87/100へ引き下げ |
また、平成29年の東京都人事委員会勧告では、「退職手当は、国の退職手当の見直しの動向を注視し、適切に対処していくことが必要」と明記しています。
とはいえ、公務員であれば今後も一定の退職金はもらえるのでは?
確かに、直近の退職手当支給額にも大きな変化はないので、しばらくの間は安定した金額がもらえると考えられます。
ただ、定年延長が進み継続して雇用する人員が増えれば、人件費も増えるので、費用削減のために退職金の減額は当然検討されます。
また、定年まで勤め上げる働き方が変わりつつある時勢と、民間の退職金減少トレンドを踏まえると、退職金の見直しは必至といえます。
なので、公務員の退職手当金額の減少は避けられません。
(出典)
・国家公務員退職手当法等の改正について(内閣官房)
・平成29年人事委員会勧告等の概要(東京都)
まとめ:都庁公務員の退職手当は、高水準で安定している
今回は、都庁公務員の退職支給額について解説しました。
本記事の要約
- 都庁公務員の平均支給額(令和2年定年退職)は、2,222万円
- 退職金は税金控除額が大きいので、手取率が高い
- 直近6年間の退職手当額は、2,200万円前後(知事部局)で推移しており、大きな変化はない
- 退職手当の平均支給額は、他の公務員と比べて大差はない
- 民間企業の退職金は減少傾向にあるので、今後退職手当の見直しは必至
公務員の退職金は、民間企業に比べると恵まれているといえます。
ただ、定年延長や働き方が変化していく中で、退職金制度の見直しが行われる可能性は高いです。
退職金が減額した場合の老後資金の補填は、つみたてNISAやiDeCo等を活用し自力で備える必要があります。
今回は以上です。ありがとうございました。